TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「やだやだやだ。もう嫌だ。全部嫌だ」

北條さんだった。

耳にはピアス、頭は手入れのしてある綺麗な金髪。
有り得ないほどにスカートを短くして、中学生のくせに濃い化粧。
校則を違反して、お金のために援助交際をして、このクラスに入ってきたという不良少女。

今は化粧は涙と汗で流れてしまっていて、綺麗な髪もぼさぼさだ。
太っても痩せてもいないプロポーションのよい体は、今はもうやつれて見る影もない。

「何も悪いことなんかしてないのに、なんで、なんでこんな仕打ちに合わないといけないの」

小さいけれどよく聞けば言葉を言っている。
暗い体育館は静まり返って、北條さんの呟く言葉だけが響いていた。

「もう嫌だ。こんなことなら、生まれてきたくなかった」

だらだらと涙を流しながら、そう呟く。
もう人格なんて崩壊している。
精神もずたずたのぼろぼろだろう。

わたしは北條さんを遠目で見ながら、思った。
ああ、この人はもう壊れてしまった、と。

そして、残されたわたしたちも、いつ壊れてしまうかは分からない。
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