LAST EDEN‐楽園のこども‐
「おい、那智」


「あんだよ」


多数に囲まれた二人は、互いの背をくっつけて死角のない体勢を作る。


5人、6人。


涼は前を塞いだ人間の頭数を数えると、チッと舌打ちした。


「何でお前といると、こうも穏やかじゃない展開になるんだよ」


「さぁな」


那智は薄い笑いを浮かべると、両の手の指を組んで、バキバキと派手な音を立てた。


「人気者だからじゃねぇ?」


「ふざけろよ」


両足を肩口まで広げて下腹に力を入れると、涼は不愉快そうに眉間にしわを寄せる。


「巻き添えは、ごめんだぜ」


「何を今さら」


そして那智は、鬼の形相で飛び掛ってきた長いスカートの女子を片足で蹴り飛ばすと、横から伸びてきた腕を腰をかがめながらかわして、足払いを食らわせた。


「ごたくは、目の前のゴミを片付けてからにしろよ、って、な!」


重心を失った少女が、ズザーッと音を立てて派手に転倒した。
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