LAST EDEN‐楽園のこども‐
(どうしてあいつがこんなに辛そうなのか、教えてやろうか)


押し黙る青蘭大のメンバーの気持ちを察して、那智は冷めた視線を彼らに投げる。


(こいつのは、全部自分の話だからさ)


涼がこんなに苦しそうに見える理由を、那智は知っていた。


だからこそ那智は、初めに涼を止めたのだ。


聞き流せるようなことなど、決して口にしないと知っていたから。


そして言葉にすれば、同時に涼自身も傷つくことが嫌というほどわかっている那智は、そうなる前に止めてやりたかったのだ。


心に傷を作らずに生きていくことはできない。


人間の中で生きるということは、傷を作ることに他ならない。


勿論、たいていの傷なら人は乗り越えることができる。


見えないそれを治すことはできなくても、過ぎる時間の中で忘れ、受け止めていくこともできる。


けれど涼の傷は、今でも暗い闇で彼女の心を蝕んでいるのだ。


忘れることも、乗り越えることもできずに、未だ生傷の状態でむき出しになっているのだ。


開けて見せれば痛むことを知っているくせに、それでも馬鹿正直に向かい合っている涼を見て、那智は不器用な親友の鼻っ面を殴ってやりたい衝動に駆られた。


(どこが乗り越えてんだよ、馬鹿やろう)


とうの昔に諦めることを覚えた那智には、涼の行動が無駄にしか感じられなかった。


お前がどんだけ真剣に向き合っても、十分の一も伝わるかどうかって話だぜ、そりゃ。
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