LAST EDEN‐楽園のこども‐
担任が訊ねると、少女はしばらく間を置いた後、静かに首を横に振る。


「持ってきてません」


悪びれた様子もなく答えた少女に、担任はこれみよがしの大きな溜息をついた。


「雨宮、お前って奴は……」


次に担任が口にする言葉を、彼女、雨宮涼は聞かなくても知っていた。


彼は必ず、自分と話すときは決まってこう言うのだ。


「お前は一体、何を考えているんだ」


と、不快感を隠しもせずに、呆れた顔をしながら。


担任の言葉を反芻しながら、涼は心の中で呟いた。


何を考えているだって?


聞いてどうする気なんだろう、この人は。


オトナという肩書きを振りかざして、自分に懐いてくる人間にしか笑顔を向けないこの人に、どんな言葉だったら届くんだろう。
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