LAST EDEN‐楽園のこども‐

摩天楼の青春

深夜。


暗い路地にある、看板のない小さな店。


そこは、裏の世界の人間しか知らない場所の一つである。


この界隈は、決して好き勝手に暴れていい世界ではない。


むしろ、彼らのルールは表社会のそれよりも厳しく、タイトなものだ。


破った者には制裁あるのみ。


その意味と恐ろしさを知っている者だけが、この世界で名を馳せ、生き延びるのだ。


涼は、久しぶりに嗅ぐ懐かしい匂いに、少しだけ口元を歪ませながら、店の扉を開けた。


警察はおろか、街を仕切っている裏街道の男たちも、入ることは許されない、少女たちの秘密の隠れ家。


そこの奥の方に、白い特攻服に身を包んだ那智が、機嫌悪そうに座っていた。


「遅ぇーんだよ」


顔をしかめた那智に、涼は苦々しげに言葉を返す。


「は?」


涼は乱暴に椅子を引き、那智の向かいに座った。


「お前が勝手に呼びつけたんだろーが。来てやっただけでもありがたいと思え。しかも、ご丁寧に迎えまで寄こしやがって」
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