LAST EDEN‐楽園のこども‐

那智

「君の名前は?」


「あ?」


首を傾げる涼に、真斗は苦笑する。


「名前教えてよ。俺、君のことが知りたいんだ」


涼は、はぁ、と大きく溜息をつくと、小さな声でバカかと呟いた。


「誰がそんな話してんだよ。お前、本気でどっかおかしいんじゃねぇのか」


「おかしくなんかないよ」


真斗は眉間に皺を寄せると、大きな瞳を凛と輝かせて、真面目な顔で言う。


「人を好きになったら、その子のことをもっとよく知りたいって思うのは、当たり前のことでしょ」


「なっ……」


突然の真斗の告白に、涼が目を見開いたそのとき。


「涼ってんだ、そいつ」


すぐそばで聞こえた、聞きなれた声。


涼が後ろを振り返ると、彼女の唯一の親友は、真斗を見つめてニヤニヤしている。


「フルネームは雨宮涼、十四歳。胸もないが可愛げもない、お前さんと同じ青蘭の生徒だよ」


「那智……」


かすれた声で名前を呟いた涼にゆっくりと近寄ると、那智は腕を伸ばして、涼の頭にポンポンと掌を置く。


「天下の公道でイチャついてんじゃねーよ。よそ様の迷惑だぜ」
だが。


「ばっか、やろう……」


涼は低い声で唸るように呟くと、那智の腕を乱暴に振り払う。


そして射るような眼差しで那智を一瞥すると、その顔を一気に険しくする。
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