清水君の嫌いなヒト
え、起きちゃった?
そう思って目を見ると
開いてはいるものの、目線が合わないことから
寝ぼけているんだと思った
そのまま手の指同士を絡ませるように繋がれると
薬指をぺろりと舐められた
「うっ…ひゃわわ、わぁ…!」
なにこれ…
なにこれ…
なんなのこれぇぇ〜!!
指の先から爪も腹も丹念に舐められて、吸われて、甘噛みされて
付け根にチュッと音をさせてキスをしてからようやく放された
『マーキング、天和…他の男に、触らせんなよ…』
そのめったに見られない微笑みを
私は“王子様バージョンの清水君”と名づける事にした
私の真っ赤な頬に手を添えてから
耳の後ろを通って後頭部を掴むと、そのまま清水君の顔まで引き寄せられた
そうして今度は私の唇が同じ目に遭った…
薬指って…そういうことですよね?清水君
__________...
『あーあ、寝込みを榊に襲われちゃった』
「あっ、あれは清水君が先にやってきたんだよ!」
『ふーん、そんなに腰砕けで言っても説得力無いけどね』
「清水君のせいだもん!」
どうやら途中で正気に帰ったらしく
それまでの事が嘘みたいにいつも通りに戻ってしまった
…もう絶対、あの王子様バージョンになって欲しくない
「(た、立てない…あんなの本当に窒息死するって)」
『(昨日寝れなかった理由が兄貴がすばるさん連れ込んだからだしな…
夢の中だと思って暴走すんなよ、俺)』
今日も少年は
双反する気持ちを朗らかな少女に重ねる
そんな、ある日の話