キミのとなり。
駅に着き、改札口に定期券を通す。



ホームで電車を待つ間若菜ちゃんは私にある質問をしてきた。



「でも、いきなり私が行ってジン嫌がりません?」



「うううん。どうせ今日も遅いから。」



寂し気に私がそう言うと、若菜ちゃんは元気に答えた。



「忙しい身ですもんね!なんてったって全国の女子のカリスマ的存在だもん!」



そんなさりげない若菜ちゃんのフォローに少し元気を取り戻した。


幾度と電車を乗り換え揺られること45分、駅から歩くこと20分、やっとマンションが見えて来た。



「ここ、ここ!」



「ハァハァハァ…先輩、超遠いじゃないですかぁ~。」



若菜ちゃんが隣で息を切らしながらそう言う。



さぁ、ここからは慎重に。


物陰に隠れながらお馴染みの忍者走り。



それを後ろから不思議そうに眺めている若菜ちゃんがボソッとつぶやく。



「何やってんですか?」


「ダメダメ!もっと腰は低く!!若菜ちゃんもついてきて!」



私が手招きをすると若菜ちゃんもそれに合わせ意味もわからず忍者走りになる。


今日もなんとか無事エレベーターに乗り込んだ。



「なっなんだったんですか、今の?」




「まぁ、芸能人の恋人には色々事情があるわけよ。」


そんな事を言う私はきっと何年か前と比べるとだいぶ有名人の恋人としての貫禄がでてきたに違いない。



「はぁ……。」



エレベーターを降りてもう一度辺りを見渡す。



「オッケ!いいよ。」



「大変なんですね、毎日。」



「本当自分でもよくやってるなって思うよ。」



愚痴をこぼしつつ玄関の鍵を開ける。




「さっ、入って!」



「お邪魔しまーす。」



長い廊下の先にあるリビングのドアを開けた瞬間、若菜ちゃんが目を丸くして足を止めた。




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