キミのとなり。
空を見上げると灰色の雲が渦を巻いて風に流されている。


“ザーッ…”


降りしきる雨を見つめていると、急にまた寂しさが込み上げて来た。



なんで……こうなるの。



どうしていつもうまくいかないの?



いっその事、事故にでも遭って記憶喪失になれたらどんなに楽だろう……



そんな思いさえ込み上げてきた。



雨宿りをして、どのぐらいが過ぎたのだろう。



しゃがみ込んでいた私はふと顔を上げる。



少し雨音が静かになった。


ふと周りを見渡すと、さっきまでいた人たちはもう既にいなくなっていた。



一人ぽつん……


いい年した女がコンビニの前でしゃがみ込んで……



益々ばかみたいだ。



でももう立ち上がる気力もないよ。



私はしゃがみ込んだまま俯いた。


あ~ぁ、このパンプス、お気に入りだったのにな……


するとその時、私の視界に誰かの足が目に入った。



その足は私の前でこっちを向いて立ち止まる。



……誰?



ゆっくり顔を上げる。



私に傘を差し掛けて立っていたのは……



「桜井君……。」



だった。


どうして……



桜井君はニッといつもの笑顔で、私に紙袋を差し出した。



「肉まん。買い過ぎてんけど、一緒に食べへん?」



「……。」



なんでもないその言葉になぜか大粒の涙が溢れた。



雨に打たれてぐちゃぐちゃの私の真横に座り込むと、紙袋から肉まんを取り出して私にひとつ差し出す。



「はい。」



彼は何も聞かない。



ただ、笑ってそう言った。


「……りがと。」



出来立ての温かい肉まんを握りしめているとまた涙が溢れた。



我慢しようとしても溢れてくる。



気付かれないように俯いて涙を流した。



そんな私に気付いていながら彼はただ黙って横で肉まんを食べ続けた。


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