キミのとなり。
「先に行って!……私、往生際悪いから、振り返っちゃうかもだしねっ!」



「千秋、」



「ん?」



「ごめん、俺がこんな仕事じゃなかったらもっと普通に……」



「違うよ、仁。」


「……。」


「私、一度足りともそんな風に思った事はないよ。仁が夢を手に入れて、最前線で頑張ってる姿見て、いつも励まされてたし、自分の事みたいにドキドキワクワクした。」



「千秋。」


「……仁は、私の誇りだったんだよ。」



ダメだ……、


また涙が出てきそうだ。


「いっ…今からでもリハーサル間に合うかな!?」


鞄から携帯を取り出して時刻を確認する。



「行って、仁。」



「……。」



「たくさんの人が待ってるんだからっ!」



「……。」



「よしっ…もう行っちゃえ!あっ!部屋の荷物……仁がいない間にまとめておくし!」



「……。」



「はいっ、もう行って!」


くるっと仁の体の向きを変えて背中を押した。


仁は立ち止まり、こっちを見ようとした。



「そのままっ…」



「そのまま行って。……お願い、振り返らないで。」


仁の左半分の顔が悲しそうにしている。



思い悩んだ末、ポケットからニット帽を取り出すと、それを頭から深く被りゆっくり歩き出した。



どんどん仁の背中が小さくなっていく。



これが私達の選んだ道……


バイバイ……


仁。



大好きな……


大好きな、仁。


ずっと遠くから見てるからね。




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