キミのとなり。
「ちょっと!痛いよっ!」


私がそう言っても足を止めない。



「痛いって!!」



その声に足を止めて振り返る。


「俺が文句言うたる!浮気した上に捨てるやなんて、何様や思ってんねん。」



そう言うとまた私の腕を掴もうとした。



「ちがっ……違うよ!」



「何が違うねん!」



「別れを切り出したのは私の方なの!」



「……。」



桜井くんの目は微動だにせず私の目を見ている。



「ハァ?ど…どういう事?」


「今は話せない、長くなるから。また……今度話すよ。」



放心状態の桜井くんを置いてオフィスに戻った。


ふと、デスクの引き出しに手を伸ばす。



そこには、変わらない仁の笑顔があった。



いつも元気をもらっていた仁の写真……



これも片付けなきゃ。



強くなろう。



仁に心配をかけないように。



私がいつまでも暗い顔じゃ、仁だって仕事に集中できないもんね。



しばらくして桜井君が戻って来た。



「おい桜井!お前今から外回りだろ!早く行けっ。」


部長の言葉を聞いてふて腐れた顔が更にふて腐れる。



「……すんません。」



ちらっと私を見た後、鞄を手に取り外回りに向かった。


きっと複雑な心境なんだろうな……。



関西弁でいうならば、


“どないやねんっ!”



……ってとこかな。





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