キミのとなり。

愛される重み・・・

ゆっくり向きを変えて振り返った。



「千秋ちゃん。」



えっ…



正面で聞こえた声に顔を上げると、そこに立っていたのはケンチャンだった。



「ケンチャン…」



ケンチャンは複雑な表情を見せながら、こちらに近づいてくる。



そしてこう言った。



「あのっ、…ごめんね…千秋ちゃん。」



「え？」



「仁とのことさぁ……。佐田さんから聞いて。」



ケンチャンは、私と仁が別れた事に責任を感じているようだった。



「少なからず俺らにも責任あるっていうか…結構メンバーみんな精神的に参ってた時でさ……あいつだけ、ソロの仕事も増えてきてプライベートもうまくいってて、妬みじゃないけど…そういうもんがあって……」



ケンチャンは申し訳なさそうに話しを続けた。



「ずっと謝りたくて、千秋ちゃんに……」



「ケンチャン…」



「あいつ、仁に謝ってもさ……“もう過ぎた事だ”っの一点張りでさ。」



「そう…」



「あいつ、笑わないんだ。」



「えっ？」



「千秋ちゃんと別れてから、一度も笑わないんだ。」


「……。」



「昔に戻ったみたいに心閉ざしてさ…」



言葉を失った。



“俺はお前と別れてから、心底笑った事は一度もねーよ。”



仁が前に言っていた言葉が蘇ってくる……



「今更こんなこと言うの、アレだけどっ…」



《ケン！早くしろっ。》



ケンチャンが言いにくそうに何か言いかけた時、後ろから他のメンバーがケンチャンを呼んだ。



「今行く！」



ケンチャンはそう答えると慌ててポケットから何かを取り出した。



「あっこれ、俺の番号。よかったら電話して！話したい事あるし。」



ケンチャンはそう言い残し足早に去って行った。



“仁が……”



“笑わないんだ”




その言葉が重く私の肩にのしかかって痛いほど胸を締め付けた。