キミのとなり。
「なんでっ…!?」



ビクッとなり、思わず立ち上がる。



「なっ……んで、ここに」


「……あぁ、ちょっと気になって。」



そう言って、俯くと頭をぐしゃっと掻いた。



懐かしい仕種にまたキュンッとなる胸……



おそらくあの記事の事で、私に迷惑がかかっているんじゃないかと気にして来てくれたんだ。



「…悪かったな、俺が勝手な事したばっかりにこんなことになって……」



「えっやっ……元はといえば頼んだの私だし。」



「…まぁ、そうだけど。」


ガクッ…



目と目が合い、薄ら笑いを浮かべる。



ぎこちないけど、懐かしい感覚だった。



「あっ…立ち話もなんだし入って!」



「いや、俺はっ」



震える手でドアの鍵を開けた。



「懐かしい…でしょ!?自分が住んでた部屋。」



仁はポケットに手を入れながら迷っていた。



部屋に足を踏み入れる―…


それが、



そんな事さえ、


今の私たちには軽々しくできない事なんだ。



だけど、私は入って欲しかった。



正直に言ってしまえば、今すぐこの腕いっぱいに



仁を抱きしめたい衝動に駆られていたんだ。


悩んだ揚句、仁は



「じゃー少し。」



そう言って開かれたドアの中へ足を踏み入れた。



胸に抑え切れない嬉しさが込み上げた。



あぁーこれだ。




これが、好きで好きで仕方がないっていう感覚だ。



ジワジワ込み上げる幸せに思わず顔を緩めた。



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