キミのとなり。
――午前9時



「おいっそろそろ出るぞ。」



玄関で靴を履きながら仁が私に声をかける。



「はぁい!」



慌てて駆け寄り、スタンドミラーで最終チェック。



やっぱり、ひどいクマ。



仕方なく、その情けない顔のままマネージャーの車に飛び乗った。



マリッジブルーじゃないけど、なんだかブルー…。



ちらっと横を見ると、いつもの様に目深に帽子を被った仁が窓の外を見ていた。



朝日に照らされた仁の横顔……


妙に落ち着いている。



くぅー…カッコイイなぁーチクショウっ。



ホテルの入口に着くと、大勢のマスコミが押しかけていた。



復活ライブでの公のプロポーズ…そしてその後すぐに開かれた結婚記者会見で、仁はマスコミに向けて私との事について初めて口を開いた。



今日の式の事も、もちろんマスコミ各社にファックスで知らせていた為、まぁ当たり前の光景だけど……。



「行くぞ。」



「…うんっ!」



覚悟を決めて車から降りる。



するとその瞬間、大勢のカメラマンと記者達に囲まれた。



《本日はおめでとうございます!ジンさんっ何か一言!》


《千秋さん、今の心境は!?》


《夫婦になられるという実感はありますかっ!?》



押し寄せる報道陣に次々にマイクを向けられる。



仁は無言のまま私の手を引いて、その間を擦り抜けるように歩き続ける。



報道陣に囲まれている映像をテレビでよく見ていたけど…



こんな感じだったんだ。


大変だなぁ…有名人って。


その様子に気付き、ホテルの入口からマイクロシティのボディーガード達を引き連れた佐田さんが出て来た。



「はぁい!ちょっとそこ道あけて~!離れて離れて!!」



ボディーガード達が報道陣たちの間をかい潜り、仁と私を守るようにホテルの入口まで道を作ってくれた。


無事ホテルに到着した私達は、佐田さんに案内され控室へ移動した。


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