キミのとなり。
8時前――


会場内の照明が落とされた。


いよいよ始まる“聖夜のライブ”


ステージにスポットライトが当てられると会場から「キャー」という叫び声が響いた。


しばらくして、他のバンドのメンバーが出て来てあいさつを軽く済ませた後、ライブが始まった。


まだかなぁ。


ふと、横を見ると若菜ちゃんが退屈そうな表情をして髪を弄っている。


この子……わかりやすっ!


そうこうしている間に、4組のバンドの演奏が終わった。


すると一気に会場がソワソワし始める。


やっぱりマイクロシティの人気は絶大のようだ。


そしてステージの袖からメンバーが出て来た。


仁だ!


ステージに立つあいつを一目見た時、私はただの一人のファン化していたかも…


ウキウキして胸が高まって……。


険しい顔でマイクスタンドの高さを調節する姿も、


軽く俯いて咳ばらいする姿も、光を放ったように眩しくてキラキラして見えた。


仁が何かアクションを起こす度に、会場から黄色い声援が飛ぶ。


「えーみんな今日は来てくれてありがとう。」


いつもの挨拶が始まった。


「えーもう見てわかってるかもしれないけど……新メンバーが加わりました。」


ドラムの前に座っていたちょっと小柄な美男子が前に出て来た。


「紹介します、新しくマイクロシティのメンバーに加わったドラムのケン!」



『ケンです!よろしく~』



さっきからステージに釘付けだった若菜ちゃんが小声でつぶやいた。



『あの人噂通り超かわい~!』


どうやら新メンバーのケンが目当てだったらしい。


「えー、じゃー今日は新生マイクロシティで新曲やります。聞いてくれ!」



“キャーッ!!”


ジャジャーン…♪



そして演奏が始まった。


< 81 / 554 >

この作品をシェア

pagetop