赤い狼と黒い兎


頭が痛い。体がダルい。食欲が出ない。

…風邪かな。最近ちゃんと寝てなかったし。

とぼとぼと階段を登り、自分の部屋へ入った。

スウェットに着替えて、ベッドに潜り込む。


ああ、嫌な夢でも見そうだな……。



「馨…?」



控えめに開かれた扉の向こうには亜稀羅がいた。



「大丈夫?」

『ん、寝れば楽なると思うから……』

「そか…。何か食べたい物ある?」

『いらない…』

「そ?…無理しないでね」



遠目に、亜稀羅が困ったような顔をしているのが見えた。



『して…ないよ…』

「…おやすみ、馨」



それを聞くや否や、あたしの意識はなくなった。



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