天空のエトランゼ〜刃の向き
「ご、ごめんなさい」

僕は慌てて銃口を下げ、手を離した。すると、銃はもとの二つの物体に戻り、僕から離れていった。

「フッ」

僕の行動に、女は鼻で笑うと、剣先を下げた。

「!?」

驚く僕の瞳に、口許に笑みをたたえながらも、鋭い視線を向ける女の表情が映る。

「なるほど…貴様も」

女は剣を鞘におさめると、僕の肩に手を置き、

「あの悪魔を倒そうとして、鍛えている者か!」

にっと笑った。






「えっ〜と」

事態が飲み込めない僕は…数時間後、とある町の酒場や博打場に来ていた。

「天空の女神は、来ていないのか!」

女は、アルテミアの人相書を、カウンターの向こうにいるバーテンダーに押し付けていた。

「そうですね。最近は、姿を見せていませんねえ。だから、店は平和そのものですよ」

バーテンダーは困りながらも、少し嬉しそうにこたえた。

「本当かあ?」

女は鞘に手を添えると、一瞬で抜刀した。

バーテンダーの首筋に、剣先が触れた。

「ほ、本当です」

一瞬の抜刀に、バーテンダーは表情を変え、焦り出した。

「チッ」

女は舌打ちすると、カウンターに背を向けて歩き出した。

突然の女の行動に緊張が走るバー内を、僕も愛想笑いを浮かべ、頭をかきながら、店内から出た。

(ふぅ〜)

外に出ると、僕は心の中でため息をついた。

(それにしても…よくアルテミアが黙っているな)

よくよく考えると、アルテミアが大人しくしているが、信じられない。

「ア、アルテミア…」

小声で囁いたが、返事がない。

「少年!」

いきなり、女が僕に顔を近付けて来た。

「いっ!?」

驚き、ひきつる僕を見て、女はにこっと笑い、

「名乗ってなかったな。あたいの名前は、キャロル・マクドナルド。よろしくな」

自分の胸をドンと叩くと、手を伸ばし、握手を求めて来た。

「…」

少し面を食らって、ぽかんとしてしまう僕に、キャロルは腕を動かし、握手を急かした。

「あ、赤星浩一です」

仕方なく、僕は握手を返した。

「赤星くんか」

キャロルは数秒だけ僕を見つめた後、もう一度笑顔をつくってから、ぎゅっと力を込めると、握手を解いた。

「君と出逢えてよかったよ」

キャロルの言葉に、僕は笑顔をつくり、

「ありがとうございます」

感謝を述べた。

そんな僕を見て、キャロルは笑顔で頷くと、すぐに真剣な表情をつくり、 こう質問してきた。

「ところで、赤星くんはどう思う。あの悪魔…アルテミアのことを」


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