ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
第五章

気づいた想い


 光を感じて、フジオミはゆっくりと目を開けた。
 逆光の中、長い髪が陽に透けている。
「…ナ…」
 かすれた声がもれた。
「フジオミ!!」
 あたたかい滴が、頬に落ちた。
 それがマナの涙だとわかるまで数秒要した。
「…マ、ナ、僕は、生きてるのか……」
「ええ。生きてるわ。よかった――」
 マナの頬から涙がこぼれ落ちる。
 フジオミの指が、マナの涙をすくいあげた。
 指が、あたたかさと同時に現実感を身体に伝える。
「泣かなくてもいい、マナ」
 ゆっくりと、フジオミは身体を起こした。
 痛みはどこにもない。
 かすかな嘔吐感に眉根を寄せる。が、軽く頭を振って感覚を追い払う。
 ようやく、周囲が視界に入ってきた。
「――」
 身体には、洗いざらしの掛布がかけてあった。
 身を動かすたびにぎしぎしときしむスプリングベッド。
 彼の知らない微かな黴臭さが鼻につく。
 天井と壁は壁紙で覆われてはいるが薄汚れていた。
 荒廃をとどめるためにコーティングはされているが、今にも崩れそうなコンクリートの建造物。
 いずれも骨董品とも言える代物だ。
「ここは――」
「廃墟よ。あなた、海に落ちてからずっと目を覚まさないから、ここまで運んだの」
 視線をさまよわせ、フジオミはマナの背後にユウを見つけた。
「――」
 マナが気づいて声をかける。
「彼がユウよ。あなたを救けて、運んでくれたの」
 フジオミは、じっとユウを凝視した。
 見れば見るほど不可思議な赤い瞳に、銀色に輝く髪。
 まるで別の地からやってきた異種族のような違和感。
「ああ 知っている。〈ユウ〉だね」
 ユウは、そんなフジオミの視線を鋭い眼差しで受けとめている。
 それから、不機嫌そうに目を逸らした。
「マナ。外に出てくる」


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