ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

 もちろん、データは機密としては扱われていなかった。
 無理もない、ドーム内の人間なら、マナ以外の誰もが知っている公然の秘密だ。
 そしてマナは、通信と学習以外のコンピュータの扱いを知らなかった。
 シイナも、マナに必要不可欠なこと以外は教えなかったのだ。
 ユウに関するデータに目を通した時、マナはユウの秘密を知った。
 三年間だけの記録であったが、老人でさえ知りえなかった情報が次々明らかになる。
 サカキという血族の血をひくユウ。両親は極めて近い近親者――兄妹だったのだ。
 父親の名はマサト。
 母親の名はユカ。
 アルビノという遺伝病を抱え、生殖能力もない彼は記録上では生まれて三年後に病死したことになっている。
 ユウの持つ能力の発現は、ちょうど二歳の時、その身を宙に浮かせたことによって明らかになった。
 記録の大まかな点だけを読み取ると、マナはすぐに次のデータを呼び出しプリントアウトした。

「だから、ユウはあんなこと言ったのね…」

 生殖能力がない。
 子供をつくれない。
 それは未来を断ち切るということだ。
 だが、マナには実感がわかなかった。
 それはフジオミになげかけた疑問が、どうしても心に根付いていたからだ。
 フジオミを選んでも、いずれ人間はこの地上からいなくなるのだ。
 それなのにどうして、シイナはあんなにも強く、自分とフジオミの子供を望むのだろう。
 マナは知りたかった。
 自分には、知らないことが多すぎる。
 もっともっと多くのことを知りたい。
 自分のこと、ユウのこと、フジオミのこと、シイナのこと、自分達をとりまく、この世界のこと。
 ドームに帰っても、きっと誰も老人やユウのように何かを教えてくれるものはいないだろう。
 そう、シイナでさえ、マナには必要以上のことを教えてはくれなかった。
 作業が終わりしだい、マナはすぐに通信を切った。
 はきだされた紙には、自分の記録もある。
 マナは自身の項目を見つけ、目を通そうと初めの部分を視界に入れた。

 視線が、一点で止まる。

「――」
 マナは自分の身体が冷えていくのがはっきりとわかった。
「…嘘…」
 彼女の手から、プリントアウトしたばかりのデータが滑り落ちた。

 『マナ――ユカ=サカキの1世代クローン。』



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