ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
「本当の風って、どんなものなのかしら。あんなに草を揺らして、もしそこにいたら、どんな感じがするのかしら」
最近、マナはよくそんな感慨に囚われる。
この白い壁の向こうの、まだ本当に見たことのない世界へ出ていきたいと。
自分を育ててくれた優しいシイナは、外は人間の生きていけるところではないと教えてくれた。
太陽が沈んで、一夜明ける前に、人間は自然のもたらす暗闇の恐ろしさに耐え切れずに発狂しているのだと。
実際にそれを試して、発狂して死んでしまった人間がいたということも記録に残っていると。
それを聞かされた時、幼いマナは泣いて、しばらくは明かりを消して眠ることはできなかった。そして、太陽が沈んだ後の外の様子を見ることは、生まれてから十四年間、一度もなかった。
それでも、マナは外界に対する憧れを止めることはできなかった。
スクリーンに映る外界の景色は穏やかな雰囲気を漂わせ、いつも以上に彼女の憧憬をかきたててやまない。
「――そうよ。太陽が沈むまでなら、いいんじゃないかしら。今度博士の機嫌がいい時に頼んでみよう」
マナがそんな風に心を飛ばしている間に、オートドアが開き、静かに部屋へ入ってきた人物がいた。
「マナ。もう時間よ。いらっしゃい」
自分の名を呼ぶ声に、マナは振り返った。
「博士」