ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
「私達は登録を抹殺された人間なんだよ。
もうどれぐらい前なのかもわからないが、我々の何代か前の祖先が、ドームを離れて外の世界で生きることを選んだ。わずかな機器と、食料となるだろう種子を持ってな。
当時の生活は困難を極めたと聞くよ。
無理もない。それまでの人々は、全てを機械に頼って生きていたのだから。
挫折して戻っていった者もいたという。
だが、残った人々はこの世界とバランスよく共存することを学び、そうして私達の代まで続いてきたのだ」
「信じられない。そんなことが、可能なの…?」
「マナ、おまえさんは、今までドームの中の世界しか知らなかっただろうが、もっとずっと、それこそ気が遠くなるほど遥かな昔には、我々はこの空の下で自由に生きていたのだよ」
「――」
「昔の人間にできたことが、今の我々にできないと思うのかね。身体的に、退化したわけでもない。退化したのは、精神の面においてなのだよ」
深い、心に染み透るような声を、マナは聞きもらさないようじっと耳を傾けていた。
「どんなに時が過ぎようとも、世界はいつでも我々に優しい。それを先に切り捨てたのは、我々の方なのだ」
老人は、大きな窓から見える、足早に影を落としては去っていく雲を、瞳を細めて見送った。
その顔は、この景色を愛おしむ想いに溢れていた。
「外の景色を見て、美しいと思わんかね。
この世界は、美しい光と色に満ちている。
どの時代より、きっと今、世界は一番美しいだろうと私は思っている。
この廃墟が、かつてはこの地の至る所に立ち並んでいた時代、大気は汚れ、水は淀み、地は腐り、木々は死んでいた。
だが今、大気は澄み、水は潤い、地は清らかに、木々は優しく歌う。
連鎖という言葉を知っているかね。
全ては循環するのだよ。
植物も、動物も、もちろん人間も、全てが等しく地上をめぐる生命の環の中にあった。
だが、人間はいつからかその環の中から外れてしまった。
この時代の中で、今は人間だけが異質なのだ。
我々がこのような時代を迎えたのも、当然のことなのかもしれん…」