ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~

 今、老人が死を迎えようとしている。
 彼女の大好きな老人が、死のうとしているのだ。
「いや、いや、おじいちゃん。死んじゃいやよ。何でもするから、お願い、死なないで」
「マナ…」
「嘘でしょう、おじいちゃん。何処にもいかないで」
 涙に濡れるマナの頬に、老人はそっと手を伸ばした。
 だが、その手は震えていた。
 上げることさえ、もうやっとなのだということが、マナにさらなる恐怖を与える。
「マナ。自分が何であるのかを見極めるのだ。
 生きていること、今ここに在ることだけでは、意味はない。
 意味とは、自分が決めるもの。自分で見いだすもの。
 それがあれば、どんなになっても、きっと生きていることはすばらしいと思える。
 私は幸せだったよ。とてもすばらしい人生だった――たくさんの仲間達と、そしておまえさんたちとすごせて、本当に、良かった」
 老人の呼吸が、浅く、速くなっていく。
「おじいちゃん!?」
 震える老人の手を、マナは必死で握った。
 少しでも震えを止めたい。
 そうしないと、存在がすりぬけていってしまいそうに思えた。
「マナ。おまえさんはいい子だ。本当に、いい子だ。おまえさんとユウは、私の生涯の中で、一番あざやかな色だった――」
 老人は、マナの背後にじっと立ち尽くすユウを見た。
「おじいちゃん……」

「ユウ。マナを守りなさい。
 全ての苦しみと哀しみから、マナを守るのだ。
 それができれば、おまえも幸せになれる。きっと」

「おじいちゃん、でも、俺は――」
「幸せになりなさい。二人とも――」
 静かに、老人は目を閉じた。
 それきり、動かなかった。

「おじい、ちゃん…?」

 答える声は、永遠に失われていた。


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