恋愛グロッキー
タイトル未編集
社員旅行。

みんなとわいわいやりながら

楽しむもの。

なのに今私は、みんなともいなければ、わいわいもやっていない。

つまらない。


「…お前今、つまらんとか思ってるだろう」


図星をさされ、思わず音速で首を振る。


「まさか!!」

「……その否定の速さが余計にあやし………おえ」


人を批判しながら青い顔をしているその人は、私の顔を見るなり嘔気を催して口元を押さえた。

状況が状況だから仕方ないにしても、人の顔見て「おえ」って。

失礼じゃないかこの野郎。

憮然とすると気付いたように睨まれる。


「お前が悪い」


数時間前からずっとこの調子だ。

私の目の前でドロドロに不調を訴えているのは石頭で有名な茂木という男だ。

それなりのキャリアがありそれなりに容姿も良くそれなりに仕事もできる彼の欠点は、完璧主義。

それが素敵とかいう女子はいるが、ぼんやり生きる私にとって模倣人間というものは少し煙たい存在だ。

そんな彼と今、なぜふたりきりなのか。

彼が不調だからである。

ちなみに、たいした体調不良ではない。

ただの車酔いだ。

森の木々も色づき美味しいものが溢れる時期になった。

わが社はいつもこの良き時期に社員旅行をする。

今年も漏れなく『京都グルメ&温泉バスツアー』が組まれ、私は勿論参加した。

わいわい楽しくやっていた。

やっていたのだ。

そして京都の豪勢な湯葉やら鱧やら漬物やら豆腐やらをいただくはずだった。

はずだったのだ。


この人が車酔いなどをしなければ。
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