久遠の花〜 the story of blood~
「ち、……がうっ」
ゆっくり首を横に動かし、否定の意思を伝えた。
「ふっ。お前はやはり、シエロと似ておるな。だがその考えも、すぐに変わることになる。なんせ我は、これよりお前の母親を解放してやろうというのだからな」
誇らしげに言う男性に、私は目を見開き、洞窟の奥へ視線を向けていた。
この先に……お母さんが、いる?
こんな暗い場所で、たった一人でいたのかと思うと……あまりに悲しくて、涙が溢れてきた。
「――――そろそろか」
呟いて数秒。
ものすごい勢いで、私たちのそばをなにかが通過した。
狂喜の声を上げながら、男性は外へ歩き始める。洞窟を出て目にしたのは――地面に倒れこむ、ぼろぼろの姿をした叶夜君だった。
「箱はどうした」
「――――っこれ、を」
血だらけの手には、真黒な箱が握られている。それを見て男性は、とても満足げに微笑んだ。
「それでいい。もうすぐだ……もうすぐ、お前を解放してやれる!」
高笑いを上げながら、男性は私を抱えたまま、川の中へ入っていく。そして適当な場で私を座らせると、膝から下を川の中へ浸けた。
「さぁ――教えたとおりにしろ」
よろめきながら起き上がる叶夜君の両手に、なにか持っているのが見える。徐々にこちらに近付き、それがなにかわかった途端――ぶすりと、鈍い音がした。
〝まさか、ここで変わるなんて……〟
心臓に、短剣が衝き立てられていた。