密会は婚約指輪を外したあとで
とりあえず1DKの狭い部屋にあげ、タオルで髪を拭いてあげると、ハルくんは嫌がらずに大人しくソファに座っていた。
色素の薄いサラサラの髪は、今は雨水を含んでしっとりと肌に張りついている。
いつかと同じで、また顔に擦り傷や痣が数ヶ所あったから、心配になる私。
ついでに救急セットをクローゼットから出してきて、傷の手当てを始めた。
ハルくんは細身なのに筋肉質で。意外と鍛えられた体つきに思わず見惚れてしまう。
『ハルが一昨日から家に帰って来ない。そっちには行ってないよな?』
今朝、実は拓馬からメールが入っていた。男の子だからと、それほど気にしていなかったのだけど……。
「ハルくん、家に帰ってないって聞いたよ。どこに泊まってたの?」
「ラブホテル」
「──ええっ?」
間抜けな私の顔とおかしな声のせいか、プッと吹き出すハルくん。
「嘘だよ」
「何だぁ……」
肩の力が抜ける。脱力した私を見てハルくんはクスクスとさらに笑う。
やっと、笑ってくれた。
ハルくんは笑顔でいてくれた方が、見ていて安心する。
「従兄の家だよ。独り暮らしだから、時々泊めてもらうんだ」