密会は婚約指輪を外したあとで
本番が始まる直前。
協会へ繋がる扉のそばで、真っ白なタキシードに身を包んだ拓馬が、私にそっと囁いた。
「奈雪。綺麗になったな。──最初の頃に比べると」
「う……出会った頃は、確かに地味だったよね、私」
「そうじゃなくて。内面的な? やりがいのある仕事をして、生き生きしてる感じ。見ていて頼もしく思える」
「……ありがとう。前より自信がついた、ってことかな?」
拓馬たちと出会って、私は後ろ向きな内面を変えることができた。
褒められて、素直にありがとうと言えるようになったのも、そのひとつ。
自分の意見を言える勇気も、持てるようになったと思う。
式が始まり、私は父とバージンロードを歩いた。
その先では、拓馬が優しく見守ってくれている。親族席に座る一馬さんや楓さんたちも、みんな。
神父様のお話が終わり、指輪の交換をしたあと。
ベールを上げて、新郎から新婦へ誓いのキスをする。
みんなの前だから、ほんの少しの恥ずかしさと緊張があった。
拍手の中、退場する私たち。
ハンカチを持った母が、涙ぐんでいるのが視界の隅で見えた。
祝福されていると実感する。
結婚式の最後は、出席者全員で集合写真を撮ってもらうことになっていた。
チャペルの広々とした庭で、式場の上階にある窓から、カメラマンが合図をくれる。
寄り添うように指示された新郎新婦を囲み、全員が同じ場所を見上げての記念撮影。
その場にいる人たちが笑顔で、楽しそうで。私はそれが嬉しかった。
きっと、みんなが笑顔で写るこの写真は、自宅の壁に飾られるだろう。
これまでに築いてきた縁──そして、これから新しく築かれる縁を、大切にしている限り──、ずっと。
- after story Ⅱ - 優しい絆【end】
お知らせ/新エピソード追加 p189~192(2021. 9.30)


