密会は婚約指輪を外したあとで

私も早く、お姫様みたいに華やかなドレスを着て、好きな人にエスコートされてみたい。


……なんて、彼氏すらできないのに、私にはまだまだ先の話だった。


あり得ない妄想にふけっていた私は、ふと本来の目的を思い出す。



──今夜このホテル内で、ある人を紹介してもらう。

自分の人生が変わってしまうかもしれない、一人の男の人。

うまくいけば、結婚という夢が近づく可能性がある。



どんな人だろう……。

それを思うと急に緊張してきた。



そろそろ約束の時間のはずだと思い、スマホで時刻を確認しようとバッグの中をあさっていた、そのとき。

一緒に中に入れていた、口紅代わりのリップクリームが、何かの拍子で外に飛び出し、床に転がっていってしまった。
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