密会は婚約指輪を外したあとで
「で、奈雪ちゃんは拓馬のこと好きなの?」

「──えっ!?」


不意打ちで思いがけないことを言われ、鏡に映る自分の顔が、明らかに真っ赤に染まっていく。


「いえ、あの、私は一応、拓馬のお兄さんの彼女なので……」

あたふた言い訳する私を見て、翔さんは意味深に笑っている。


「どうせ、いつも拓馬から毒舌浴びせられてるんでしょ。それならさ、綺麗になって拓馬のこと見返してやろうか」


いいことを思いついたとばかりに、翔さんが悪戯っぽく目を輝かせる。


「そんな……私なんて地味だし、絶対無理ですよ」

「“絶対”なんて、言わない方がいいよー?」


アイカラーの色を選ぶ手を止め、翔さんが言った。

以前も誰かに同じことを言われた気がする。

一馬さん、だっただろうか。
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