コスモノート

Scene1 発射台の話

どこかの病院の待合室。
大きな総合病院のようでたくさんの患者や医療関係者が行きかう。
一人の医者が座っている。精神科、神経科の医者らしく、心の病気を専門にしている。落ち着いた佇まい、優しい語り口で子供から老人にまで人気があるようだ。

ただ、この医者は患者の病気をもらいやすい。とてももらいやすい。どうやら今日は医者としてではなく、患者として診察を受けようと自分の順番を待っているようだ。

見た目は大人だが心がまだ少年の少年がひとりで何かうれしそうに話しながらやってくる。
医者と少し離れたソファに座る。

医者と少年は、面識があるようだ。もしかしたら、医者は少年の主治医なのかもしれない。
やさしい口調で少年に話しかける医者。
始めは照れくさいのか、医者を無視して一人でしゃべり続ける少年。
少年は自分の上着の中に何かを隠し持っている。

医者の名前が呼ばれる。
医者は診察室に行こうとするが、今度は少年が医者に話しかけ始める。
後で話そうと何とか少年をなだめようとするが、少年のおしゃべりはとまらない。

医者は仕方なく、今日の受診を諦め、少年と話し始める。

『ぼくはずっとずっとろけっとのはっしゃだいをつくっていてやっとできあがったんだ。にんげんがみたことのないうちゅうのはてのはてまでろけっをとばせるはっしゃだいだよ。』

そういって少年は自分の上着から、一丁の銃を取り出した。

『まだ、とばすろけっとがないんだけどね。』

おもちゃの銃を医者に見せて楽しそうに話す少年。
医者もその話を楽しそうに聞いている。

『これ、せんせいにあげるよ。それはせいぜい二十億光年くらいかな。ぼくいまもっともっとすごいのつくってるから、だからこれはせんせいにあげるよ』

医者は、少年の手から銃を受け取った。
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