幼なじみじゃイヤなんだ。
私…なにか怒らすようなことしたかな?
さっきまでとはまた違う、心臓が不穏な音を響かせる。
流瑠、どうして?
「相澤さん?」
上坂くんが顔を覗きこまれて我に返った。
「あ、ご、ごめん上坂くん。私そろそろ行くね!」
「…そう?頑張ってね」
「う、うん。ありがとう…」
私は音合わせを行う教室へと歩を進める。
流瑠が歩いて行った方向とは逆の方向へと進む。
ただ、物理的に流瑠と離れて行くだけなのに、1歩1歩進む度、心も離れていく様に感じる。
何も言わずに通り過ぎて行った流瑠の後ろ姿が頭から離れてくれない。
今から集中しなきゃならないのに。
今から本番なのに。
そう、自分に言い聞かせれば聞かせるほど、動揺し、集中出来なくなってしまった。
音合わせをする教室に入り、フルートケースからフルートを出す。
もう、何をしても、流瑠の後ろ姿が頭から離れてくれなかった。