One Night Lovers
 遠くの高いビルのてっぺんに掲げられた大企業の看板を眺めながら首を傾げた。

 占い師のくせにはっきりしない言い方が気に入らない。

 話を総合すると、私は近々いい男に出会っていいことがある。

 それはどうも恋のようなものらしい。

 しかし、肝心なところが「誰にもわからん」で済まされてしまった。

 そりゃ未来のことなど誰にもわかるはずはない。

 わからないから占ってもらってるのだ。

 それなのに「わからん」は無責任じゃないか。

 最後にそんなことを言われると、言われたこと全部が疑わしく感じられる。

 まぁ、占ってもらおうと思ったのも気休めだから、最初から特別何かを期待していたわけじゃない。


 隣でぽっかりと口を開けて熟睡しているネネを見た。

 彼女は会社の同僚でしかも席が隣だ。

 同い年ということもあり、何かとつるんで遊んでいる。正確に言えば、ネネの遊び歩きに私が付き合わされているのだけど。

 そして今、こうして新幹線に乗り込んでいるのも、避暑地に行きたいとネネが言い出したからだった。

 占いの結果を話して聞かせたところ、ネネは目を輝かせて言ったのだ。
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