One Night Lovers
 私はひきつった顔で首を傾げた。

 結局ネネの目的は私のいい男探しなどではない。

 私はいわばダウジングの棒なのだ。

 失恋した友人ですら有意義に利用しようという彼女のしたたかさには驚きを通り越して感心してしまう。

 利用されること自体は別にかまわないのだが、失恋の痛手を拭いきれていない私の目から見ると、あの占い師の言葉を純粋に信じ切れるネネの能天気さがものすごく羨ましかった。


 そのネネもしばらくはアトラクションを攻略することに夢中になる。

 基本的に彼女は楽しいことが大好きなのだ。

 勿論それは私だって同じ。

 ネネに負けじとテンションを上げる。失恋の痛みなんかジェットコースターで吹き飛んでしまえばいい。

 ひととおり絶叫系のマシーンと制覇すると、さすがに休憩しようということになった。

 ソフトクリームを食べながら社内の噂話で盛り上がっていると、ネネが急に私の腕を掴み声を潜めて言った。


「ねぇ、あのゴーカートに乗ってる男、結構イケてない?」


 指差す方向を見てみると、確かに同じ年代のちょっとカッコよく見える男性がゴーカートに乗っていた。


「でも隣に座っているのは彼女じゃない?」

「……だね」
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