妄毒シチュー

「あ、おいしい……」

今まで赤ワインは苦手だと思っていたけど、毒々しいその赤い液体は意外なほどすとん、と喉を通り抜けた。

飲みやすい、というか、かなりおいしい。

「でしょ。ミナちゃんワイン飲まなそうだったから軽めなの選んできた」

ぐいぐい飲んでしまいたくなるあたしを見透かすように、ニセ天使は長い綺麗な指を伸ばし

「飲みやすくてもワインだから、調子に乗って一気に飲まないでね」

そう笑って、あたしの手の中の黒いカップをカチンと指で弾いた。



「あー!
昼間から飲むお酒って、どうしてこんなに美味しいんだろう!」


ヤケクソのように空に向かって大声で叫んだ。

< 58 / 122 >

この作品をシェア

pagetop