飼い犬に手を噛まれまして

二者択一


─────夜の東京をタクシーの中から眺める。

 着替えや色んなものを詰め込んだぎゅうぎゅうのバッグから、携帯電話を引っこ抜いた。


「もしもし、先輩。自宅ですか? よかったら、今から会いに行っていいですか?」


 郡司先輩は、合い鍵渡したんだから電話なんていらねーよ、と笑ってた。

 



 なんで、家主の私が家出しなきゃいけないんだろ?

 お人好しも程々にしないとね……



 ううん、違う。



 私、怖いんだ。あのワンコの真っ直ぐな瞳に吸い込まれちゃいそうで、逃げ出したんだ。

 ワンコのこと何も意識してなかったから、一緒に暮らしてたって問題なかったけど、あんな風に求められた途端に、私ワンコが怖くなった。


< 217 / 488 >

この作品をシェア

pagetop