飼い犬に手を噛まれまして

「そうだな、紅巴は首にあたる俺の吐息にも弱いもんな?」


 もう逃げられない。先輩がスイッチ入っちゃうと、先輩が満足してくれるまで解放してもらえないから……


 キッチン台の縁を掴んで、きゅっと唇を噛み締めた。


「俺はたえてる紅巴に弱いんだよ」


「いじわる!」


「お仕置きって言っただろう?」



 フランスの雑貨屋さんで買ったエプロンの紐がするりと解かれる。肩から落ちたそれを先輩は満足そうに眺めると、私に寄り添う。


「ローストビーフ、美味そうだな、紅巴」



「やぁっ!」






 
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