糖度∞%の愛【編集前】


「沙織さん」

「何でしょう?」

「沙織さん」

「だから何でしょうか?」


自分のデスクに座りながらパソコンから目を離さずに答えているにも関わらず、彼方は呼ぶ声を止めない。

だから再び「沙織さん」と呼ばれてしぶしぶパソコンから視線を上げて、ムスッとしながらこちらを見下ろしている彼方を見上げた。

その手には一応書類らしきものを持ってはいるけど、もう部署も違うので私に渡すものではないことは確実だ。


「部長ならあちらにいらっしゃいます」


彼方はつい最近までこの部署にいたのだから部長の席を知らないはずがないと分かっていながらそう言ったのは、嫌がらせ以外のなんでもない。

こんな誰でもわかるような言外の拒絶に、周りが息をのむのが聞こえた。

それに気づかないふりで再びキーボードに指を走らせる。
部署内の人が手を止めているみたいで、私の立てるキーボードの音だけがカタカタと響く中、「あんまりじゃないか?美崎……」という部長の声に、「今は仕事中です」ときっぱり言うと、彼方がそばから離れた気配がして、再び部署内に音が響き始めた。

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