超我が儘ツンデレ姫の甘ーいカクテル ~恋の酔い方マニュアル~
キューバ・リーブル

恋愛氷河期真っ只中の現代。
社会の波に飲み込まれ、朝から晩までクタクタに働き、寝に帰るだけの生活をしている女性は何人居るのだろう。
休日の半日を寝て過ごし、男性と出掛ける事がなくなったのは何年前なのだろう。
仕事に身を捧げ、恋愛など見向きもしなくなったのは、いつなのだろう。
「恋がしたい」「彼氏が欲しい」そう思わなくなったのは、どうしてなのだろう。



「なーに、書いてんの?」

聞き慣れた声に、携帯を操作する親指を止める。

「何でも良いでしょ。あんたには関係無い」

グラスに残るカクテルを一気に飲み干し、再び指を動かすアタシは携帯小説家を夢見る、花田薺(ハナダ ナズナ)20歳。
隣で生ビールを飲む阿呆面男は、梁川颯(ヤナガワ ハヤテ)22歳。
颯とは合コンで知り合い、場の雰囲気で一夜を過ごした仲。
朦朧とした意識の中での行為など殆ど覚えてはないが、キスが上手かった事だけは微かに覚えている。
抱いた女は数知れず、所謂SEXにしか才能がない男。

「薺はー、俺の事どう思ってるの?」

不意に、耳許で聞こえた甘く切ない声に熱を帯びる。

「…はっ?」

素っ頓狂な声が零れた。
我ながら、情けない。

「だから、俺の事、す・き?」

アタシの目を捉えて離さない、颯の切れ長の優しい目に吸い込まれそうになる。
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