Do you love“me”?


時計を気にしながら、着いたホテルのロビー。

周りを見回す私の視界には、最上さんらしき人は映らなくて……。

しばらくキョロキョロしていた私の肩が、後ろからポンっと叩かれた。


「美月ちゃん!」

「あ、最上さん……」

「ごめんね。お待たせ!」

「いえ、私もさっき着いたところなので」

言いながら、さり気なく最上さんの周囲を見回してみたけど、一緒に来ると思っていた他の人の姿がない。


「あの、他の方は……」

出来るだけ“二人は嫌だなぁ”という気持ちを出さないように、笑顔でそう聞いた私だったけど。


「あー、実は空いてる子が見付からなくてさぁ……。ごめんねー」

最上さんは、申し訳なさそうな顔をしながら、顔の前で手を合わせたんだ。


「あー、そうなんですか」

さっきの電話の時だったら、色んな口実を付けて断ることも出来たけど、ここまで来て、今更“そういえば、友達と約束がっ!!”とか、言えるわけもなく。


“急にお腹がっ!!”とか、言ってみようか……。

そんな事を本気で考えていた私の腰に、そっと添えられた最上さんの大きな手。


「え、ちょっと……っ」

思わず顔を顰めかけた私に、最上さんはにっこりと笑いかけて、

「じゃ、行こうか」

まるで私の反応を無視するかのように、ゆっくり歩き出す。


嫌――というか、怖い気持ちはあったけど、お互いもういい大人だし。

しかも、周りにはたくさんの目がある。

相手は有名人なんだから暴挙には出ないだろう。


大丈夫、大丈夫。

まるで自分に言い聞かせるように心の中で呟いた私は、これから五つ星のホテルの中にある、話題の二つ星レストランでフレンチを食べるらしく。


お店に入って、ピカピカのカトラリーで頂くそれは美味しいはずなのに、緊張というか胸が変にざわつくせいで、あまり味を感じない。

目の前には、笑顔で色んな事を話している最上さんがいて、多分私も笑っているんだと思うけど、話しにも集中できないし。


別に、男の人が苦手とかではない。

だけど、この最上さんは……少し苦手。

何でだろう。

よく分からないけど“苦手だ”と、そう感じてしまうんだ。
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