Do you love“me”?
「ちょっとー、大丈夫ー?」
ひょっこりと顔を出した私の目に映ったのは、一人で慌てふためいて、お父さんに頭を下げる稜君の姿だった。
「あの、すみません。お邪魔しています! すみません、キッチンにまで上がり込んで!!」
「いやいや! こちらこそ、うちの働かない甘えん坊がいつもお世話になってるみたいで」
にこやかに、さり気なく私への暴言を吐いたお父さんは、タジタジの稜君に笑顔を向けてしゃがみ込む。
「ごめん、ごめん。驚かせるつもりじゃなかったんだ」
言いながら、未だにワタワタとしている稜君と一緒に、落としたボウルの中に入っていたらしいプチトマトを拾い始める。
その姿があまりにも面白過ぎて、私は一人でお腹を抱えて笑っていた。
だって稜君が可愛すぎる。
それに、こんなに緊張している人を久し振りに見たんだもん。
そんな私を軽く窘《たしな》めたお父さんは、困ったように稜君に言った。
「稜君、こんな子でいいのかい?」
「ちょっとお父さん! どういう事よー!?」
「だってお前、男は彼女の父親に会う時は緊張するもんなんだぞ? それをそんなに笑って。……なぁ、稜君」
そのまま顔を覗き込まれた稜君は、拾いかけのプチトマトを手に持ったまま一瞬驚いたように目をパチパチとさせて。
「ホントですよー。俺、動揺し過ぎてボウルまで落としちゃったのに!!」
やっといつも通りの笑顔を浮かべながら、唇を尖らせるようにして私を見上げ、お父さんと二人で、何やら楽しそうに笑い合っていた。
それからすっかり打ち解けたらしい稜君とお父さんは、二人で熱くサッカー談議を交わし、その後、みんなで食べたゴハンはいつもよりも美味しく感じた。