Do you love“me”?


「佐々木さん、今日も残業? 最近多いね」

誰もいないオフィスで、ひとりパソコンに向かう私に話しかけてきたのは、帰ったものだとばかり思っていた杉本さんだった。

稜君と別れた日から一週間とちょっとが過ぎて、私はまた残業を無駄に増やし、バカみたいに仕事に打ち込んだ。

どこまでも、学習能力のない自分。

でもそうしないと、どうしても稜君のことを考えてしまうし……。

下手にテレビを点けて、稜君の試合が放送されていたりすると、また気持ちが沈んでしまうから。

「すみません。もう少ししたら帰ります」

杉本さんに視線も向けずに返事をする。

「……」

「何ですか?」

すぐにどこかに行くと思っていたのに、なぜか私の隣から動かない杉本さんの視線を、痛いくらいに感じる。

「彼と、何かあった?」

「……」

「あったんだ」

無視を決め込む私を見て、クスッと笑った杉本さんの言葉に、胸がどうしようもなく痛み出す。

「杉本さんには、関係ないです」

「まぁねー」

もうホントに何なの!?

まるでからかうような口調にちょっと苛立って、もう一度口を開こうとしたその時、杉本さんの口をついて出た言葉に、私の心臓が大きな音を立てた。

「彼、大丈夫なの?」

「……え?」

「一応、プロでしょ?」

――どういうこと?

「あのままじゃ、放出されちゃうんじゃねーの?」

意味がわからず顔を顰める私の前で、杉本さんは何が可笑しいのかクスクスと笑う。

稜君を侮辱するようなその発言に、当然怒りがこみ上げた。

けれど、今は動揺の方が勝っているせいか言葉が出てこない。

だって、どうして?

稜君が決めて、私と別れたんでしょう……?

だったら、どうして?

混乱する私の頭には、解決できない同じ疑問ばかりが沸き上がる。

「稜君は、今――」

「え?」

「……」

彼の現状を尋ねる言葉を口にしかけて、ハッとして口をつぐむ。

「調子、最悪。観てるこっちがイライラするくらいにね」

そんな私の顔を覗き込んで、変わらない口調でそう口にした後、杉本さんは「まぁ、俺はサッカーよくわかんねぇけどー」と、またバカにしたように笑った。

「……すみません。帰ります」

「そう」

「お先に失礼します」

「はい、お疲れさん」

杉本さんの言葉を背中で受けながら、私はモヤモヤする気持ちを抱えたまま会社をあとにした。

< 365 / 396 >

この作品をシェア

pagetop