限りない時代の如し~時ヲ越エタ桜ノ木~




「珠紀ィィィ――!!」

「…!?」


上から声が聞こえる…

そう思った時にはあたしの意識はなかった。



―――――


「んん…」

「珠紀!?無事か…?」

「や、まと…」


目を開けると、整った顔。

この男は大和だ。

あたしの愛しい…恋仲にある男だ。

気づけば辺りはもう月の出る夜で、あたしは桜の木にもたれていた。


「あの化け物は俺がぶった斬ったから…安心しろ」

「すまない…。助かった」


名高い女侍、と言えども所詮は女。

適わぬ相手や、油断をすれば危機に遭うのもたびたびだ。


「足は…痛むか?」


袴をめくり、足首を見てみると赤黒い痕がはっきりと残っている。


「ああ…。たちの悪い毒のようだ」

「おぶってやろう。…ほら」


大和はしゃがんであたしを背中に招く。

あたしは黙って上に乗った。


「夜風が気持ちいいな…」

「そう…だな」


大和はあたしをおぶりながら、梓をしっかりと引いてくれる。


「あのガキが心配してるだろう」

「そうかもな…」


梢のことだ。

まだ眠りもせずに待っていてくれるのだろう。




< 10 / 10 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

今日も雨が降りました。

総文字数/1,667

恋愛(純愛)3ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私が彼を好きになった日 私が彼と付き合った日 私と彼との初デートの日 私と彼が喧嘩をした日 私と彼の未来――― 私が恋をして 私が彼と生きた日々は いつも雨でした。
水色ミステリアス。

総文字数/4,824

ミステリー・サスペンス7ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
――俺は、冷たい。 西島 美希斗(ニシジマミキト)はクールな高校1年生。
キャンバス。

総文字数/1,315

恋愛(学園)2ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
甘い恋 苦い恋 たまには、キュンとしたり たまには、ホロリと涙をこぼしたり 「愛さなければ良かった」なんて思うこともあれば 「ちゃんと愛せば良かった」なんて思うこともある

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop