Two of us
「いってきまーす」

玄関を出ると、隣の家からちょうど車が出るところだった。

「あ、紘一郎さん」

そっと車に近づいて声をかける。

「キミカか・・・おはよう」

返された笑顔に思わずドキドキしてしまう。

「お、おはよう」

「送って行ってあげるよ、乗りな」

「う、うん」

出勤するところだった紘一郎さんはスーツ姿がすごく似合っていて、大学時代より少し短めに切りそろえた髪や、運転するときだけかけるメガネ、いつも腕にしている時計までがすべてかっこよく見えた。

ドキドキしながら助手席に乗り込むと、より一層近くなって心臓が爆発しそうになる。

「彩香、結婚するんだって?」

車が滑り出すと同時に紘一郎さんが言った。 

そう言った横顔は、とても悲しそうで紘一郎さんを好きなはずの私まで胸が痛くなる。

「う・・うん・・・今日翔太さんと挨拶に来るって」

言いながら紘一郎さんの顔は見れなかった。

うつむいたまま、自分の鞄をぎゅっと抱きしめる。
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