餞の言葉

先生は笑う。
あたしを、教師の目で眺めながら。

あたしが先生から女として見られる日なんて、きっとやってこない。

それでも。


「これ貸してて、先生。いつか、絶対会いに来るから」

「……わかったよ。卒業おめでとう」

「ありがとう、先生」


そうして、あたしは歩き出す。

階段を降り、昇降口を出て、今だ寒い風の吹く外へと飛び出す。

朝降っていた雨は雪に変わっていて、白い小さな結晶がふわふわ舞っていた。
きっとこれが、今年最後の雪になるんだろう。

< 21 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop