時計兎
道に迷った。


外をあまり出歩かない土地勘のない彼女があてもなく歩きまわった当然の結果と言えるだろう。


後ろから押されれば、今にも折れてしまいそうな華奢なその背中は寒気の為か不安の為か、小さく震えている。


――ハァ

息が白い


冬めく寒空の下、彼女は恨めしそうに空を見上げ、厚着してこなかった事を後悔した。


――寒い

持ち物といえば入れた覚えのないものがポケットにあるぐらいだ。

そんな凍える思考の中、一筋の光を見た気がした。

それは天来の考えに思えた。

彼女はこの状況を打開する名案を思い付いたのだ。
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