時計兎
――おかしい

左腕の激痛に顔をしかめ、出口へ急ぐ。

ドアノブに手をかけたが開かない

――なぜ?

思いっきり壁を蹴ったが自分の足を痛くしただけだった。

「出して下さい!
 誰かいませんか!!」

無情にも沈黙が返ってくる。

――どうして開かないんだ?
でも、窓から出れば同じか

穏やかで愚直な思考に従った。
< 56 / 73 >

この作品をシェア

pagetop