時計兎
「私ね…言いたいことがあるんだ……」

彩夏が白目をあらわにする久遠に言う。

「ずっと誰かがいなくて寂しかった…一緒にいてくれてありがとう」

開いている口からの返答はない。

「だからこれかカチ」

死の訪れを告げる音が無情にも響き渡った。

別れも言わさず、容赦なく死神のようにさらっていく。それは誰も抗うことのできない存在。


永遠に残っていくことを願おう。
少女の血で必死に塗られた壁には




『すき』




兎はそれを見つめていた。



End
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