Vrai Amour ~妃奈の場合~
まるでお見合いのような場所で再会して、母親たちは「あとは若いお二人で」なんていそいそ部屋を出て行く。

「まいったな・・・」

扉が閉まると同時に、恒輝さんは照れたように頭をかいた。

お互いにこんなふうに再会するとは思ってもみなかったので、何を話したらいいのか困ってしまう。

すると、恒輝さんは突然両手でバシンと自分の頬を叩いた。

その音にびっくりして、私は思わず背筋を伸ばした。


「妃奈さん」

「は、はい」

まっすぐに私を見つめる恒輝さんを見る。

さっきまでの照れた表情はどこにもなく、すごく真面目な男の顔をしていた。



「こんなこと突然聞いても驚くだけだと思うのですが・・・」

「なんでしょうか」

「僕は西園寺家の長男として、実家を継いで大きくして両親を楽させてやるのが義務だと思っています」

「は、はい・・・」

「でもそれは両親に押し付けられたものじゃなくて、僕自身の考えです。そして・・・」

そこまで言うと、恒輝さんは再び照れたように私から視線をそらし、頬を染めた。

そして、きゅっと唇を噛み締めてから再び私のほうを見つめた。
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