*硝子*【短】
これからは、一人で
頑張らなくちゃいけない。

母も居ない、父も居ない
そして、倖も居ない・・・。


─プルルル、プルルル─

『もしもし・・・?』

「お母さん?私よ宝・・・」


一応、私は母に倖の事
を告げる事にした。


『た、宝・・・』

「ごめんなさい・・・驚かして」

『今度は何・・・?』

「うん、倖が病死しちゃって・・・」


「『・・・・・』」

二人の沈黙。


死んだなんていきなり
言われても頭が着いて行かない
に決まってる・・・。

私だって最初、意味が判らなかった。


『宝・・・』

「・・・何?」




『頑張ったね』


今まで強い口調で
喋ってたから・・・

急に優しい声なんて、
反則よ・・・。

涙が止まらないじゃない・・・。


「う・・・っひっく・・・」
「うん・・・っありがと・・・お」


昔の事より、現を大切に
生きたい・・・。


『宝、お母さんこそ
ゴメンなさいね・・・』

「お母さんっ・・・お母さん」


しゃっくり混じりの泣き声。
私の心の声だった。
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