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「香織、大丈夫?」
公園からの帰り道。
無言が続くなか、ふと声をかける雄大。
あたしは雄大の後ろから、うん、とだけ答えて、また黙りこむ。
キュッと拳を作ると、その拳は少し小刻みに揺れている。
あたし、震えてる?
今になって、怖さが増す。
もし雄大が来なかったら、あたし殴られてたんだ。
一発だけじゃなく、何回もやられてたかもしれない。
そう考えると、涙が溢れそうになる。
「かおり?」
運悪く、そんなあたしを見ていた雄大はあたしに近寄る。
「悪い、怖い思いをさせた。
巻き込んで悪かった、お前のことは守れると思った」
ギュッと力強く抱き締められた。
あたしはなにも言わず、ただ涙を流すばかり。
この場所が、今は心地良い。
腕を回すなんてことはできないあたしの腕は、行き場をなくして雄大の服の裾を軽く握った。
「…ごめん、」
何度も何度も謝る雄大。
あたしは首をふる。
平気だよ。大丈夫だよ。
泣き止んでから伝えなきゃ。
だけど涙は止まらなくて、溢れるばかり。
そんなあたしをまた強く、抱き締める。
「香織、家に帰ろう」
涙をぬぐいながら、優しくそう声をかけられる。
あたしは黙ってうなずく。
それに優しく笑いかけると、手をひかれながら、家へと帰る。