カリソメオトメ

3

 ウリをやめてしまえば、同じようにそれをやっていた友達から疎まれるのは分かっていた。あいつに抱かれてからあたしは他の誰にも抱かれていないし、抱かれるつもりもない。そしてあの頃にあった色々な物欲が奇麗に消え去っていた。

 腹部を蹴り上げられ、その痛みにあたしは体をくの字に折り曲げ転がる。友達だった連中は、あたしがウリを止めたのを知るとその理由を問い詰め、あたしが答えないと数人掛りで殴り蹴った。

 あたしはもうウリをするつもりなんてカケラもない。金がいらないとは言わない。けれど何が哀しくてあいつ以外の男に抱かれる必要があるだろうか。金が欲しかったらバイトをすればいい。

 こいつらにとってあたしは裏切者らしい。あたしにはそれが不思議でならない。どうしてこいつらと同じ行動をする必要があるのだろう。同じ行動をとらない人間が裏切者だなんて、馬鹿げていると思わないのだろうか。
 あたしがどうしてウリを止めたのか、その理由を話さないことが気に入らないのだろうか。例えそうだとしても、だからって殴り蹴れば解決するとでも思っているのだろうか。

「あんた、私達を裏切ってただですむと思ってんの?」
「私達、友達でしょ。なのになんで友達を裏切るのさ。信じらんない」
「どうせあんたみたいなクズのことだから、男でもできたんだろ。どうして私達に話さなかったのさ。それって裏切りだろ」
 好き勝手な理屈を並べ立て自分を正当化しているこいつらを見ていると、少し前までの自分を見ているようで痛々しい。

 あるラブホテルでウリをやっている時に手首を切り自殺未遂をしてから、あたしは親からも見捨てられていた。一応高校には通っているけど、学校に行くことなんか月に数回だった。こいつらとつるんでいる時間がどんどん増えていった。

 こいつらも色々複雑な事情を抱えている。そしてそれを少しだけでも打ち明けることができた仲間は確かに大切だった。そしてだからこそ、あたしはあたしの決意としてウリを止めるコトを理解して欲しかった。理由を話さなければ分かり合えないほど浅い付き合いじゃないと思っていたから。
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